国際結婚 中国情報を活用しよう
K証券のパンフレットによると、同証券東京支店経由で振り込まれた資金はただちに米ドルに転換され、米R証券に開設される各顧客のための口座に送金される。
この資金を運用者は原則として、米ドル建てのファニーメイ債またはフレディー・マック債(いずれもトリプルAの格付け)を購入し、場合によって英国や豪州の国債にも投資される。
「本債券の資産としての裏づけは、世界的に見ても米国債に準ずるきわめて安全性の高い債券によって確保されている」と述べている。 ところがSECやCFTCの訴状によると、Aは通貨・商品市場で先物、オプション取引を大規模かつ頻繁に繰り返し、損失を大きく膨ませていたのだ。
結局、事件が発覚した九九年八月末、口座残高はわずか四六○○万ドル。 元本保証を謳い文句にしながら、客の資産を食い潰しては、詐欺師と呼ばれてもしかたないではないか。
こう質問すると、Aは大きく首を横にふった。 「それはまったくの誤解だ。
たしかに円ドルの取引でいくらかの損失は出た。 だが、それほど極端に投機的な取引ではなかったはずだ。
事件の本筋ではない」と。 では、金や銀などの取引はどうか。
「それも重要ではない。 せいぜい総資産の一、二パーセント以下だろう。
数億ドルもの損失が出るはずがない」これは嘘だ。 後に、大手会計事務所のKPMG・Pが行ったプリンストン債口座の調査によると、九七年二月から九九年八月だけでも、総額四億七六五○万ドル(約五七二億円)もの損失が判明した。
内訳は円ドル取引で二億九五○○万ドル、指数取引で一億三三六○万ドル、金属取引で二九四○万ドル、クロスレートで一二七七万ドルなどとなっている。 これら数字を見るかぎり、「損失は大したことない」とのAの言葉は説得力がない。
私は皮肉を込めた調子で彼に尋ねた。 「では、あなたは何ら不正行為はしていない、何者かの陰謀の犠牲者だというのか」とAが微かに笑った。
「そう、これはすべてR証券が仕組んだことだ。 B・Rが筋書きを書いたのかもしれない。
彼らが日本のカネを奪ったのだ」と、私はいいかげんウンザリしていた。 Aが頭の回転の早い、きわめて雄弁な男だというのは分かった。
しかし、熱弁を振るう彼には悪いが、その証言は著しくKに欠ける。 こちらの質問を正面から受けず、話の論点をすり替える魂胆が見え見えなのだ。
こう思ったのは私だけではない。 プリンストン債事件を扱うニューョーク連邦地裁のR・O判事は、二○○○年一月一四日の公判で、個人資産や取引記録の紛失で延々と言い訳するAに怒りを爆発させ、MCCにぶち込んでしまった。
彼は現時点も拘束中だが、理由は詐欺罪ではなく法廷侮辱罪になっている。 ここまでで、M・Aが一癖も二癖もある人物だということが分かると思う。
N新聞が花形アナリストと持ち上げたのが、不思議にすら思えてくる。 彼をよく知るウォール街のアナリストが興味深い話をしてくれた。
その人物は苦笑いしながら語ってくれた。 「一言で言うと、Mはガッド・フライ(家畜にたかる虻。
転じて口うるさい人間)だな。 いつも複数の市場で大きなポジションを持ち、自分の思うように短期的に価格を動かそうと狙っていた。
そして予測が外れれば、つねに陰謀説を説いていた。 『きっと自分の知らない陰謀が進行していたに違いない』が彼の口癖だった」と。
それは天性の性格なのか。 「そう思う。
明らかにパラノイア的な面があった。 あらゆる事柄に強烈な意見を持つのだが、他人の意見に耳を傾けるということがない。
『お前が何を信じようと構わない。 だが、自分はこう思う』ときたもんだ。
そういえば、マーケットに関する書籍を読んでいる姿も見たことがなかったな」と。 Aの虚言癖を示す例として、私の手元に、顧客向けに作成した彼の紹介パンフがある。
それを見ると……。 被害に遭った大手メーカーの幹部は、担当者をかばうように答えた。
「九○年代半ばはバブル崩壊で本業が低迷している時期でした。 それを、財務部の人間が資産運用でいくらかでも取り返したいと願うのは当然でしょう。
しかし、低金利で思ったような成績が出せない。 そんな時に接近してきたのがK証券の人たちだったんです。
年利四パーセントはいかにも魅力でした。 担当者だけを責めるのは酷ですよ」と。
プリンストン債事件とは結局、政府の超低金利政策、日本人サラリーマンの一途さ、そして「P・E・I会長であるM・A氏は、一九六二年以来、市場の動きについて研究を重ね、わが社の人工知能と経済モデル開発に携わってきました。 (中略)またR、B大統領にもアドバイスを提供しています」と。
Aは四七年生まれだから、なんと、一五歳の高校生の頃から金融市場を研究していたことになる。 この一文だけでもピンとくるではないか。
では、なぜ、日本の投資家はそんな男をカリスマ・トレーダーと崇め、なけなしのカネを預けてしまったのか。 責任逃れの論法といい、言っていることの脈絡のなさといい、半端ではない。
それは今から五年前、あるマーケットで起きた大混乱と、その陰で暗躍した超大物投資家に関するものであった。 それにつけ込んだ外資系証券マンが生んだ悲喜劇だった。
結局、どのような取引で日本のカネを食い潰したのか、Aは詳細を明らかにしなかった。 だが、二ユーヨークの金融関係者が、その一端と見られるエピソードを教えてくれた。
日本の投資家がプリンストン債に投じた一二五○億円は、いったいどこへ消えたのか。 この謎に焦点を当てる時、まず、これまで登場した人物や組織、彼らが関わったマーケットを見直す必要がある。
九五年に若手トレーダーの暴走で倒産した英B社、九八年のロシア金融危機で事実上破綻に追い込まれたR・T・C・Mなど、過去の巨額損失事件では、必ず事前にマーケットの乱高下がついてまわった。 プリンストン債事件でも、それを強く示唆するエピソードが残っている。
それは、九七年から九八年にかけて国際銀市場を襲った買い占め、価格暴騰、そして陰で暗躍した超大物投資家W・Bだった。 ニューョークの銀市場で買い占めの動きがあると最初に警告したのは、米大手証券M・RのT・Aというアナリストだった。
九七年二月、顧客向けに配布したレポートで彼は、米国のファンドやトレーダーが秘密シンジケートを結成し、銀の買い占めと価格釣り上げを図っていると指摘した。 突拍子もない話に聞こえるが、当時の銀市場や在庫の統計を見ると、たしかにそれを裏づける材料が揃っていた。
ニューョーク商品取引所(NYMEX)の銀在庫は、九七年初めの二億オンスから一年で約半分の一億三○○万オンスに減少し、三年ぶりの低水準に落ち込んでいた。 商品の供給と在庫が減れば価格は当然上がる。
NYMEXの銀相場は九七年後半から五○パーセントも上昇し、翌年初めには六・四ドル、九年ぶりの高値をつけていた。 マーケットで何かが進行しているのは、誰の目にも明らかだった。
そんななか、九八年一月二七日、ニューヨーク南部地区連邦地裁で起こされたある訴訟が華を走らせた。 銀相場高騰で損失を受けたカナダの投資家ケリー・シールの代理人として、ニューョークのR・A・S法律事務所が、米大手トレーダーのF社、F・E・K社などを訴えたのだ。
原告側の主任弁護士はK・R。
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内訳は円ドル取引で二億九五○○万ドル、指数取引で一億三三六○万ドル、金属取引で二九四○万ドル、クロスレートで一二七七万ドルなどとなっている。 これら数字を見るかぎり、「損失は大したことない」とのAの言葉は説得力がない。
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九五年に若手トレーダーの暴走で倒産した英B社、九八年のロシア金融危機で事実上破綻に追い込まれたR・T・C・Mなど、過去の巨額損失事件では、必ず事前にマーケットの乱高下がついてまわった。 プリンストン債事件でも、それを強く示唆するエピソードが残っている。
それは、九七年から九八年にかけて国際銀市場を襲った買い占め、価格暴騰、そして陰で暗躍した超大物投資家W・Bだった。 ニューョークの銀市場で買い占めの動きがあると最初に警告したのは、米大手証券M・RのT・Aというアナリストだった。
九七年二月、顧客向けに配布したレポートで彼は、米国のファンドやトレーダーが秘密シンジケートを結成し、銀の買い占めと価格釣り上げを図っていると指摘した。 突拍子もない話に聞こえるが、当時の銀市場や在庫の統計を見ると、たしかにそれを裏づける材料が揃っていた。
ニューョーク商品取引所(NYMEX)の銀在庫は、九七年初めの二億オンスから一年で約半分の一億三○○万オンスに減少し、三年ぶりの低水準に落ち込んでいた。 商品の供給と在庫が減れば価格は当然上がる。
NYMEXの銀相場は九七年後半から五○パーセントも上昇し、翌年初めには六・四ドル、九年ぶりの高値をつけていた。 マーケットで何かが進行しているのは、誰の目にも明らかだった。
そんななか、九八年一月二七日、ニューヨーク南部地区連邦地裁で起こされたある訴訟が華を走らせた。 銀相場高騰で損失を受けたカナダの投資家ケリー・シールの代理人として、ニューョークのR・A・S法律事務所が、米大手トレーダーのF社、F・E・K社などを訴えたのだ。
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